№750 駅の時刻表から見る 私鉄ダイヤの変遷 4.小田急江ノ島線藤沢駅(後)

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 前回は1990年代の藤沢駅の時刻表から、小田急線(特に江ノ島線)のダイヤを振り返ってみました。
 21世紀に入り、遅々とではあるものの小田原線の複々線化工事が進捗していきますが、それ以前にJR東海道線のダイヤが、小田急線、特に藤沢発着の江ノ島線のダイヤに大きな影響を与えていく事になります。

 2001(H13)年12月、JRの「湘南新宿ライン」が運行を開始。
 山手線と併走する貨物線(埼京線が運行されていた)を活用する形で東海道線・横須賀線と高崎線・宇都宮線(東北本線)を直通運転するもので、藤沢から新宿への直通運転が設定される事になります。
 運行開始当初はまだ小規模で、ラッシュ時にはほとんど設定されず、東海道~高崎線系統に関しては、日中は主に国府津~籠原に1時間に1本、車両も高崎線の115系や211系(当時はグリーン車はなかった)が運用されていました。
 しかし、当時進行中の池袋駅構内の改良工事が完成すれば大幅な増強は必至、当然小田急に多大な影響を与える事になるのは解りきっていました。
 このため、この翌年からダイヤ上の対抗措置が採られていく事になります。

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2002(H14)年3月23日改正
 まず、新宿~藤沢に、急行に代えて「湘南急行」なる列車が設定されました。
 ポイントは
①南林間・長後は通過
②相模大野での増結・切り離しを行わず全区間10連で運転
 これは相模大野での停車時間の短縮も意味しており、この結果新宿~藤沢は最速57分と、1時間を切りました。
(改正前の日中の急行は下りが約1時間2~5分、上りが約1時間5~11分)
 注目したいのは、湘南急行はほとんどが藤沢折返しと言う事。
(土休日の朝夕のみ片瀬江ノ島への延長あり。行楽考慮か)
 もちろん藤沢からの着席サービス提供の意味がありますが、江ノ島線において急行系の列車が片瀬江ノ島まで行かないというのは、定期ダイヤでは恐らく初めてのケースと思われます。
 これをフォローするためか、日中は町田~片瀬江ノ島急行が60分間隔で設定されています。
 平日朝方では上り急行2本が10連化されていますが、こちらも内1本は藤沢始発に変更されています。
 この他〈ホームウェイ〉は1本増発、江ノ島線の特急ロマンスカーは平日下り11本・上り12本、土休日12往復となりました。
 これは今の所、江ノ島線史上最大の設定本数です。
 また各駅停車の6連化も進められていますが、日中は1時間6→5本に削減されました。
 さらに小田原線の急行の10連運転区間の拡大が進んだ事もあり(大半が新松田まで10連運転)、相模大野で急行に連結する各駅停車の設定がほとんどなくなり、早朝と夜間に数本見られるのみとなりました。
 小田原線では、千代田線~多摩線直通の「多摩急行」が、準急を建て替える形で設定されています。

 各駅停車の削減はやはり行き過ぎだったか、2003(H15)年3月29日改正では、再び1時間6本運転に戻されています。
 4連の各駅停車は、早朝の1往復のみとなりました。
 この他湘南急行の運転時間帯を拡大。
 夜間の急行も10連化が進みますが、大半が藤沢折返しになっています。
 一方〈えのしま〉は、利用が振るわない平日の一部列車が取り止めとなりました。
 また朝方上り1本を除いて「EXE」での運用に統一。

 長期化する小田原線の複々線化工事ですが、梅ヶ丘~喜多見についてはこの改正でようやく完成、肝心の下北沢付近がまだだから不完全ではあるものの、梅ヶ丘~和泉多摩川8.1㎞で複々線が実現する事になりました。
 一方その直前の10月16日にはJR湘南新宿ラインが大幅に増強、E231系に統一された上、東海道線~高崎線系統については1時間2本に増強され、特別快速まで設定、運行時間帯も拡大されていました。
 小田急ではこれに対抗すべく、複々線区間を最大に活用した大幅なダイヤ改正が実施される事になります。

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2004(H16年)12月11日改正
 湘南急行を発展させた形で新たに快速急行を新設、新宿~藤沢は最速53分で結ばれる事になりました。
 下北沢~新百合ヶ丘がノンストップになりますが、成城学園前・登戸については、多摩急行とセットにしたダイヤでフォローしています。
快速急行は新宿~小田原にも設定)
 快速急行をフォローする急行は引き続き60分間隔で設定されていますが、内容は平日と土休日で大きく変わり、平日は新宿から直通の10連、土休日は線内折返しの6連で運用。
 また経堂に急行が停車するようになった(平日朝夜を除く)一方、本鵠沼・鵠沼海岸は急行通過駅となり、6連の急行が「特別停車」という形になりました。

 一方〈えのしま〉快速急行設定と引き換えに大幅削減、平日の日中はほとんど運行がなくなりました。
 新たに新百合ヶ丘にも停車。
 〈ホームウェイ〉は一本増発になりましたが、3本中2本は藤沢止まり。
 この改正で展望室付「LSE」[HiSE」は〈えのしま〉号からの運用から(一時)撤退し、完全にEXEに統一されています。
 平日10時47分発〈えのしま24号〉は藤沢始発で、片瀬江ノ島に関わらない〈えのしま〉は初設定。
 なお小田原線の〈サポート〉の愛称はさすがに特急らしくなかったようで、箱根湯本行は〈はこね〉、小田原までの区間運転は〈さがみ〉と整理の上改称されました。〈さがみ〉は復活です。

 2006(H18)年3月18日改正では、箱根登山鉄道・小田原~箱根湯本が全列車小田急編成による運用になるなどの変化がありましたが、江ノ島線は小修正のみ。

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2008(H20)年3月15日改正
 各駅停車が全列車6連となり、相模大野で急行に連結する運用が、ついに全滅しました。

 快速急行は平日の午前中に1本のみ、片瀬江ノ島への直通運転が設定されていました。
 しかし2008(H20)年3月15日改正で取り止めになり、全列車藤沢折り返しとなりました。
 この改正ではロマンスカーの運転形態の一部見直しや、遅延防止のための一部パターンの変更などが行われていますが、江ノ島線に関してはほとんど変化はなく、以降3年間ダイヤ改正は行われませんでした。

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2012(H24)年3月17日改正
 3年ぶりに改正され、この3月から使われている時刻表です。
 この改正をもって10000形「HiSE」、20000形「RSE」、5000形が引退しました。
 この事は特急ロマンスカーの運用に大きな変化を与えています。

 平日6時台に〈えのしま66号〉が設定されました。
 10時台からのシフトで、通勤を想定した〈えのしま〉は初めてになります。
(この列車は新百合ヶ丘は通過)
 夜間は〈ホームウェイ〉が増発されて5本となりましたが、土休日1本を除いて全て藤沢止まりに短縮。
 平日の〈えのしま75号〉も藤沢止まりになり、初めて江ノ島に行かない〈えのしま〉も設定された事になります。
〈ホームウェイ87号〉も含め、久しぶりに展望室付(7000形)で運用。
 さらに「MSE」60000形が、定期では初めて江ノ島線特急運用に入りました。
(これまでも海水浴シーズンの臨時特急(今年も運転)や、連接車の不具合から来る運用の変更等で営業運転の実績はあった)
 平日1往復、土休日下り5本・上り3本がMSEです。
 このうち土休日増発分の〈えのしま11・12号〉は、新宿~相模大野〈あさぎり〉との併結運転になっています。
 併結の相手は〈はこね〉〈あしがら〉〈サポート〉〈さがみ〉に次いで5種類目です。

 一般列車では平日下りの快速急行が1本だけ片瀬江ノ島直通になりましたが、夜間に関しては一部削減が行われています。
 このダイヤ改正で、小田急全体でも一般列車においては、編成の分割・併合が完全に廃止になりました。

 以上、小田急江ノ島線藤沢駅の時刻表から、22年間の江ノ島線のダイヤを振り返ってみました。
 
 ところで、ここで今一度、一番最初に掲げた1990(H2)年3月27日改正の時刻表を掲げてみます。

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 ここで平日上り各駅停車に限定すると、115本の設定がありました。
 一方最新のダイヤでは121本で、22年も経ってわずか6本の増加に過ぎません。
 また急行は1990(H2)年改正で中央林間、2000(H12)年改正で湘南台に追加で停車するようになりましたが、いずれも他社線の延伸・接続に対応したものです。
 湘南急行快速急行の停車駅の設定も同じです。
 江ノ島線の場合、沿線での大規模なニュータウン開発はほとんど行われておらず、需要の変化の要因のほとんどは、外部の変化からもたらされたものと見る事が可能です。

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 その最もなるものは言うまでもなく「湘南新宿ライン」でしょう。
 JRを意識しているのは、藤沢駅ホームの快速急行のPRが、JRのホームに向けてこれ見よがしに掲げられている事でも解ります。
 当分はJRにしても、線路容量からこれ以上の増発は難しいので現状維持が続くと思われ、これを睨む小田急の側も、恐らく同じでしょう。

 ただ、「藤沢から座っていける」とは言え、ロングシートの通勤車というのはアピールという点で少々弱くも感じられます。
 前にもどこかで書いたけれど、ロマンスカー(日中)の復活も考えて良いのではないか?
 現在の藤沢~新宿の小田急の運賃は570円、+ロマンスカー特急料金600円、合計で1,170円。
 JRの藤沢~新宿普通運賃は950円なので、+220円でロマンスシートに座って行けると考えれば、悪い話ではないでしょう。
 箱根特急としては今イチかも知れないEXEも、4連で運用できる江ノ島線なら、その機動力が生きるのではないでしょうか。
 湘南台に停めたっていいし。
 ただ、いずれにしろ下北沢付近の複々線化工事が完成しないと、江ノ島線に限らないが小田急のダイヤの抜本的な改善は難しいでしょう。
 正直この構造でいいのかなあ?とも思うのですが、いずれにしろ早い完成、複々線化開通が望まれます。

 一方、片瀬江ノ島側については、急速に支線化が進んできているのは見てきた通りです。
 江ノ島を中心として、江ノ電も走る湘南エリアも小田急グループにとっては貴重な観光資源のはずですが、都心から近いからほとんど日帰りになるし、JR横須賀線や湘南モノレールもあるので、箱根のようにアクセスの大半を小田急グループに依存、という形にならないからでしょうか。
 海水浴客自体の減少もあって、1990年代には臨時急行の設定もなくなっているし、多摩線や千代田線からの直通ロマンスカーは定番になりつつあるものの、「湘南新宿ライン」対策にダイヤ編成の重点が置かれる状況は続くだろうし、片瀬江ノ島側は当分このダイヤ体系が続く事になるのでしょう。

 申し訳ありませんが、コメントは受け付けない事にしています。この記事について何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。
 また、何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。

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