№946 クローズアップ現代「“安全”は取り戻せたのか ~B787 運航再開~」

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 今日は更新が少々遅くなってしまいました。
 6月1日、ようやく日本でB787-8が営業運航を再開する運びとなりました。
 これを受けて、昨日のNHK「クローズアップ現代」で、B787の運航再開に向けての動きや、新型機開発やその安全性の検証の問題点について取り上げられていたので取り上げます。
 時間も圧しているので、放送の内容を簡略化し、要旨を記した上で、簡単ながら感想を書いてみます。

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真剣にメモを取る客室乗務員。来月に迫った、B787型機の営業運航再開に向け、安全対策について学んでいる。

(客室乗務員)お客様とじかに接する私達がちゃんと答えていく事で、お客様も安心して乗って頂けると思う。

今年1月、日本とアメリカで相次いだ、バッテリーのトラブル。世界中の787型機が全て運航を停止する、異例の事態を引き起こした。
ボーイング社は、バッテリーの全面的な改修を迫られた。万が一電池が発火しても、封じ込められる対策。煙が出ても、機体の外に排出する対策。これらが認められ、日米の航空当局が、運航再開を承認したのだ。
しかし、トラブルの根本的な原因は今尚明らかになっていない。ハイテク機の生産体制そのものに、死角があるとする専門家もいる。


(経営学者)開発や設計を外部委託することで、リスクは広がる恐れがある。

最新技術を結集した、「夢の旅客機」を襲ったトラブル。安全は、どこまで確保されたのだろうか。

キャスター 国谷 裕子:来月1日、B787型機の営業運航が日本で再開される見込みだ。「燃費がよく」「環境にやさしい」そして「経済性が高い」として、次世代の旅客機として期待されたB787型機だが、初めて採用されたリチウムイオンバッテリーが発火するなどトラブルが相次ぎ、1月、米航空当局は、運航停止を指示したのだ。これまで航空機用バッテリーとして広く使われていたものと比較して、「小型」「軽い」「寿命が長い」等の特性を持つリチウムイオンバッテリーだが、過剰な電気が流れてショートし、米では発火したと見られている。焼け焦げたバッテリーの中の8つの電池。調査は続けられているが、現在も原因の特定には至っていない。そんな中で、なぜ、運航が再開されるのか?
 航空の世界では、トラブルや事故が発生すると、機体の改修と、原因の調査が並行して進められる。機体改修は、問題の箇所が判明した段階で、メーカーが改修策を立案、当局の審査を経て、運航再開が認められる。今回、バッテリーが同様のトラブルを起こしても、飛行に支障がない改修をボーイング社が行ったと判断され、運航再開が認められた。一方の原因調査は、時間をかけて根本的原因を突き止め、今後の安全対策に活かすのが目的で、今後、日米それぞれで調査が続けられる。原因が特定されていない中での運航再開の承認。航空会社はどのような対策を迫られているのだろうか。

取引先の旅行代理店を訪ねた、日本航空の営業マン。バッテリーシステムの改修に関わった技術者が同行し、787型機の安全性を直接説明している。来月からの営業運航再開に向けて、顧客の信頼を得る取り組みだ。

(日本航空技術者)トラブルを起こす可能性は全て摘むという事で、対策を講じております。
(旅行代理店部長)原因が特定できないのは、ご苦労された所でしょうね。
(旅行代理店社長)しばらくはどうかなって、皆さん思うんじゃないかな。

 今回787型機で採られた新たな対策は、どのようなものか?
 問題のバッテリーは、緊急時のみ使用される、予備電源だ。ボーイング社は、同じトラブルが起きても、火を封じ込める対策を採ったとしている。電池一つ一つに、ショートを防ぐ特殊なテープを巻きつけ、電池の間には熱に強い仕切り板を設置。電池の一つがショートしたり、高温になっても、周りの電池に影響が及ばないようにした。その上で万一に備え、もう一つの対策も講じた。機体の底に、排気孔が設けられた。バッテリー自体をステンレス製の容器で密閉し、煙が出た場合は配管を通して、排気孔を通して機体の外に排出する。幾重にも採られた対策。日米の航空当局は、バッテリーに異常が起きても、飛行に重大な支障はないと判断したのだ。
 日本の航空会社も、今回の安全対策の見直しに関わってきた。日本航空では、トラブルの経緯を独自に分析し、24項目に亘る意見をまとめ、ボーイング社に、機体の改修に反映させるよう求めた。


(JALエンジニアリング 技術部長)ボーイング社が言っている安全対策に漏れはない、我々が考えた事がきちんと反映されているという事は、1つ1つ確認しながら進めてきたつもりだ。

記者取材:それでも残る利用者の不安に、どう答えていくのか?先月中旬、日本航空の国内外の支店の責任者を集めた、緊急の会議が開かれた。日々、乗客と接している参加者達は、安全対策をどう伝えていけばいいのか、様々な意見や、戸惑いの声が上がった。
(コールセンター部門)一般のお客様は、バッテリーだけでなく、就航が遅れた事も含めて全般的に不安に思っている。
(サービス部門)想定しうる、あらゆる原因を網羅した対策を講じたという事だが、震災の際、想定外の事が起こったと説明された時、世間的にかなり批判を浴びた。そこは慎重に考えた方が良いのではないか?
 社長は、丁寧に説明していくしかないと訴えた。
(日本航空 植木義晴社長)3万2千人のグループ社員全員が、787型機の改善策・安全性に確信を持って、皆さんにしっかり話していこう。
 緊急会議を受け、現場では手探りの取り組みが始まった。日頃、技術的な説明をする事がほとんどない客室乗務員は、新たな対策について、正確に説明できる知識を身につけようとしている。技術担当者が、直接乗務員を指導している。
(客室乗務員)787型機だと、不具合を起こしやすいという所の対策は?
(技術担当者)対策を、飛べなかった時期にやっているので、かなり品質の上がった飛行機になっていると思う。
(客室乗務員)原因が何かお答えしようと思ってメモしたけれど、ちゃんとお客様に答えられるには、どのような言い方でお伝えすればよいのか?
(技術担当者)今回は、発熱を止めるために全ての事に対策を採った。
 安全の確保と、乗客への説明責任。航空会社は、運航再開を目前に、大きな課題に直面している。
(日本航空 植木 義晴社長)お客様に案して乗って頂くため、その責任は航空会社にある。社員からも色々な意見も上がってきている。それらも一つ一つ取り入れながら、お客様に少しでも安心を伝えていきたい。

国谷:たとえ発火しても火を封じ込められる、外に燃え広がらない改修が行われたし、煙も外に出す仕組みが作られたという事で、安全だという事で、運航再開が承認された訳だが、本当に大丈夫なのか?
古川 恭(社会部記者):原因も解っていないのにどうして対策が打てるのか、不安に思う方はもちろん居られるだろう。これまでの調査で解っているのは、「バッテリー内部の電池がショートを起こした可能性が高い」という事だ。しかしボーイング社が対策を急いだのは、ショートそのもの以上に、ショートの結果、火が出たことを問題視したからだ。飛行中の火災は、航空機にとって非常に危険な事とされているからだ。そこで、ショートの原因はともかく、まず火を起こさない事を第一に対策が立てられた。今回考え出されたのが先ほどの対策だが、この立案には日本航空の他、全日空も参加した。そうした対策の結果、少なくとも火災は防げる、という事で運航再開が承認された。
国谷:ただ、運航中にバッテリーが発火する可能性は残されていて、もしそれが燃えた場合、飛行中の不都合を起こす事にはならないのか?
古川:普段の電気はエンジンが発電して作っている。極論すればバッテリーがなくても飛行や、客室の電気に影響は出ない。エンジンで発電できなくなった場合は、後部に予備の発電機があって、これを始動させれば飛行を続ける事ができる。これも使えなくなった場合に、初めてバッテリーの出番になる。「バックアップのバックアップ」、という位置づけだ。このため火災対策が第一、ショートを起こした原因はその次、という順番になって対策が進められてきた。
国谷:「バックアップのバックアップ」であれば、普段はリチウムイオン電池は使われていない訳だが、ではなぜ電池に過大な電力が流れてショートしたのか、不思議だ。
古川:使われていないはずのバッテリーのトラブルに、関係者は衝撃を受けた。このため日米の事故調査当局は、バッテリーそのものだけでなく、システム全体に対象を広げて、事故調査を進めている。火災は封じ込めた、とはいえ、バッテリーがどうしてショートを起こしたのか、という事はきちんと突き止められなければならない。

もう一つの柱、原因調査はどこまで進んだのか、アメリカで原因調査を担っているのは、NTSB(国家運輸安全委員会)だ。先月、NTSBはバッテリー開発に携わった企業の出席を求め、異例の公聴会を行った。この公聴会では、ハイテク機の原因究明の難しさが浮き彫りになった。

アメリカで航空事故の原因調査を行うNTSBは、今回のトラブルについても、現場の検証や、バッテリーの分析などを続けている。しかし現時点では、根本的な原因を突き止められていない。
先月、NTSBは公聴会を開催し、証人として、バッテリーの開発・生産に携わった関係者が出席した。トラブルの原因を究明するため、開発段階の安全試験にまで遡って質問がなされた。


(NTSB委員長)試験は万全だったか?
(ボーイング社幹部)万全でした。
(NTSB委員長)飛行中の状況が再現されていたか?
(ボーイング社幹部)当時としては最新の方法を採用して、電池内部のショートを再現した。「くぎ刺し試験」です。

 ボーイング社が挙げた「くぎ刺し試験」は、バッテリーの安全を確かめるための、最も厳しい試験とされている。電池に直接くぎを差し込み、電池の内部で、強制的にショートを引き起こさせるのだ。安全対策が不十分な場合は … 発火する。今回のバッテリーは、「くぎ刺し試験」を行った結果、発火しない事を確認していた。ボーイング社は、トラブルが起きた原因は、見当がつかないと証言した。

(ボーイング社幹部)私達は、あらゆるショートの原因について説明する事はできない。分からないことは分からないとしか申し上げられない。

 さらに公聴会でNTSBが注目したのは、787型機の生産体制だった。

(NTSB副委員長) 787型機のような高性能の飛行機を造るためには、新しい生産体制や技術を取り入れる事になる。つまり、同じ問題が再び起きうるのだ。

 787型機の生産体制はどのようなものなのか?従来の飛行機は、製造ラインに次々部品が持ち込まれ、組み立てられていく。機体1機の製造に2週間以上かかるのが一般的だった。ところが、隣の787型機のラインでは、わずか5日程で1機が完成する。
 実は、787型機は、部品を組み上げた“ユニット”をつなぎ合わせるだけで完成するのだ。“ユニット”の設計・製造を担うのは、最先端の技術を持つ、外部のメーカーだ。委託の割合は70%。世界各国から、ボーイング社の工場に持ち込まれる。


(ボーイング社 広報部長)787型機のラインは整然としている。ここで使われる部品は、委託先から届けられた“ユニット”だ。私達の仕事は、それらを合体させるだけだ。生産にかかるのは「何ヶ月」ではなく「何日」という単位だ。飛行機の生産革命なのだ。

 ボーイング社は、バッテリーを含む電気システムについて、開発段階から、フランスのタレス社に委託していた。タレス社はバッテリー本体の開発を、日本のGSユアサに委託していた。
 公聴会にはタレス社、GSユアサの技術者も出席していた。新しい生産方式の旅客機で起きた、初めてのトラブル。NTSBはバッテリーの安全を、実際には誰が確認していたのか、質問した。


(ボーイング社)GSユアサが開発段階で試験を行ったので、機体に搭載しても安全だと理解していた。

 ボーイング社は、GSユアサの判断を信用していたと述べた。

(GSユアサ)我々が作成したドキュメントや手順をタレス社が承認し、それをボーイングがさらに承認する、そういうプロセスでやっていた。

 ボーイング社は、安全を確認する体制が十分でなかった事を認めた。

(ボーイング社 幹部)当時行われたのは最新の試験だったが、今思えば、我々自身でもっと厳しい試験にするか、新技術についてもう少し理解しようとすべきだった。

 ボーイング社が、世界の最先端技術を結集したとする、787型機の生産体制。なぜトラブルが起きたのか?NTSBはさらに詳しく調査を続ける事にしている

国谷:公聴会の様子を見ると、バッテリーシステムの開発において、最終的に安全を誰が確認するのか、責任の所在が非常にあいまいに思えたが、何が一番の問題だったのか?
鈴木 真二(東京大学大学院教授):電源システムを含めてだが、安全を確認して市場に出て出回ったものが、実際には煙が出た、火が出たという事が起きてしまった。今回の公聴会の様子でも、一番根深いのは、ボーイング社が開発のかなりの部分を外部委託にしたのだが、新しい技術もかなり委託している、そういう状況で審査する政府当局と、とりまとめを行うボーイング社が、新しい技術に充分な経験がない中で審査しなければいけなかった、その体制が適切だったかどうかが大きく問われていると思う。
国谷:(787型機は)相当最先端の技術が取り込まれた飛行機になっているのか?
鈴木:787型機は燃費が従来機より2割優れている、経済性をアピールした機体になっている。どうしてそこまでやらなければならなかったのか、航空機メーカー同士の激しい競争、航空会社の経営状況が非常に厳しくなっていて、航空券のコストも下げなければならなくなった、我々ユーザー(乗客)も安い旅客便を求めている、そういう状況の中で、航空機の経済性が非常に強く求められている、新しい技術が強く求められている、その結晶が787型機だったと思う。
国谷:新技術の航空機を審査する上で、どのような体制が一番求められるのか、まだ手探りの状況なのだろうか?
鈴木:航空機は長い歴史の中で安全性の審査体制が築かれてきたのだが、階層的なピラミッド構造の生産体制・開発体制の中で、安全性をどのように審査すればよいのかが大きく問われている。階層的な構造で、あまりにも上下関係がはっきりしていても、下の階層から上の階層になかなか意見が言えない、逆にフラットすぎても全体を把握する者がいなくなってしまう。どのような審査体制が理想的なのか、特に新しい技術を取り入れる際に、これを学んでいこうという事を、NTSBも今回の公聴会でかなり強調していた。
国谷:「経済性追求の一つの結果」と言われたが、リチウムイオン電池も、従来より軽くて、小さいものとして選ばれた、その結果、大きな「経済性」を損なう、「安全性」を問われる結果を招いてしまった。何が問われているのか?
鈴木:「経済性」の中に、もっと「安全性」をいう事を考えなければいけない。今回のトラブルでメーカーも、ユーザーも、航空会社も、大きな損失を経験した。長期的な目で見ると、安全性をしっかり担保する事が、大きな経済性をもたらす事を、我々が今回学んだ事だと思う。
国谷:原因究明がなされていない中での再開では、何を徹底すべきか?
鈴木:2つ重要な点がある。1.対策を立てたからそれで終わり、ではない。使いながらデータ収集によって、事故の前兆をキャッチする事。2.万一の事が起きた時に、安全になっているかという事をきちんと、メーカーもユーザーも、対策を採る事だと思う。

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 主に2つのパートに分けて取り上げられた。
 前半は営業運航再開に向けての航空会社(ここではJAL)の取り組み、後半はNSTBの公聴会から見えたB787開発・生産体制の問題点。
 客室乗務員と技術担当者がじかに顔を合わせて話し合うなど、どの程度機会があるものなのだろう。
 直接B787ではないが、本社の会議のサービス部門の発言には考えさせられた。
 確かに東日本大震災や原発事故の時、「想定外」の3文字が世論から手厳しい非難を浴びたが、では、どこまで想定の範囲に収めればよいのか?
 私も以前少し書いた記憶があるが、だからといって何でもかんでも想定の範囲に詰め込むと、極端な話、旅客機の形態そのものが成り立たなくなる事もありうる。
 ただ反感を煽るだけのジャーナリズムにも問題があるとは思うが、旅客機に限らず、今後も大変なテーマとして存在し続けるのだろうと感じました。

 後半の開発の下り、ボーイングが電源システムをタレスに委託→タレスがバッテリーをGSユアサに委託、全体の安全確認の体制は不十分、ものすごく乱暴なのだが、この流れを見た時、私の脳裏には、昨年の関越ツアーバス事故がよぎりました。
 あれも下請けの下請けが重なって安全運行対策や責任の所在が、いつの間にかあいまいになった事例だと思います。
 以前も少し書いたが、この後エアバスのA350が就航すると、ボーイング・エアバスとも、白紙の状態からの新設計機の開発計画がなくなる事になります。
 今後の開発計画のやり方がどの方向に行くかはドシロートだから全然分からないが、やはり開発を企図してから、最低でも5~10年程度のスパンを必要とするのではないかと、どのメーカーも覚悟しておいた方が良いだろうと、その開発のための体制の整備に力が注がれるべきと、見てて改めて感じました。

 何度も書いているように、私はノーテンキだから、運航再開となれば「よし、そろそろ乗りに行くか」と思っていました。
 実は10月前半、ANAのフランクフルト→羽田線でB787初搭乗の予定です。
 多分、何事もなく飛んでくれるでしょう。
 何事もなく安定した安全運行を継続するためには、航空会社内部の垣根も、航空業界内部の垣根も、省庁や、さらには国の垣根さえ越えた、安全運航のための体制作りが、求められる時だと思います。
 それぞれが知恵を出し合って、安全・快適なB787(もちろん他の機種も)の運航が継続される事が期待されます。

 当ブログでは、コメントは受け付けない事にしています。この記事について何かありましたら、本体の「日本の路線バス・フォトライブラリー」上からメールを下さい。折返し返事をしたいと思います。
 また、何か質問がありましたら、やはり本体上からメールを下さい。解かる範囲でお答えをしたいと思います。質問と答えは当ブログにも掲載します。
 なお、当ブログに寄れない緊急の事態が発生した時は、本体でお知らせします。

 明日の更新はお休みです。
 本体の更新を行い、宮城交通(ミヤコーバスを含む)と仙台市交通局の画像を新規に公開する予定です。
 積み残しのコンテンツがあるのはゴメンナサイ。

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