№1829 私鉄名車列伝 142.阪急電鉄5300系

「私鉄名車列伝」、今回は阪急です。
 阪急はその生い立ちや線路条件の違いから、神戸・宝塚線(まとめて「神宝線」)と京都線で、一見同系列も、実際は別々に用意されています。阪急ではこれまで神宝線と京都線を交互に書いてきていて、前回は神宝線9000系だったから、今回は京都線です。

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 阪急電鉄5300系は、京都線向け初の新造量産冷房車として、1972(S47)年より製造が始まった。
 車体の形態や基本的な性能は3300系に準じ、車体の寸法は大阪市営堺筋線直通に対応するため、標準車体より長さは100㎜短く、幅は100㎜広い。駆動装置は、京都線では初の中実軸TDカルダン方式として神宝線と共通とし、ブレーキは電気指令式HRD-1Dを採用した。電動機は140㎾(3300系は130kw)に増強され、パンタグラフはMc・Mに下枠交差式2機を装備している。正面左側車掌窓上部には手動式の行先表示装置を設置しているが、通常は運転区間・種別を書いた標識板を正面窓下に掲げていた。2ハンドルの運転台も、阪急では最後となった。
 なお、京都線では初めて、トップナンバーが1ではなく0から始まっていて、この点でも神宝線と共通になった。

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 車内は引き続き阪急伝統の木目化粧板+オリーブグリーンのロングシートの配色を踏襲している。日よけは伝統のヨロイ戸。冷房装置は8,000kcal/hを4機搭載した集約分散型。

 1次車は22両、1973(S48)年からの2次車は32両が製造されたが、当初は堺筋線には乗り入れず、MT比率半々の8連を基本として、急行を中心に地上線で運用されていた。この間、5863号車には電機子チョッパ制御装置が装備され、新造から2年間試用された。また5408・5409号車はユニット運転台試作車として製造された(現在継ぎ目は埋められている)。1975(S50)年からの3次車から、冷房装置が10,500kcal/h×3に変更されている。その後堺筋線直通運用に備えて8連(6M2T組成)のため、4・5次車合計31両、特に中間車が1978(S53)~1984(S59)年の間に製造され、105両全車両が出そろった。1979(S54)年3月ダイヤ改正で堺筋線直通急行(通称「堺筋急行」)の運行が始まり、5300系が就役して、初期の目的が達せられた。


 1987(S62)年より、正面の行先表示装置を電動化し、運転台上部には種別幕を別に設けた。標識灯と急行灯は分離され、並んで窓下に配置され、6000系に似た顔つきに変化した。側面も電動の種別・方向幕を設置している。正面の種別・方向幕は5317Fから天地方向に大型化されている。2001(H13)年までには、銭湯に出る機会が無い車両を除き、電動化が完了した。同時に車イススペース・非常通報装置・ドア開閉予告装置(チャイム)も設置されている。改造の最終2編成では、案内情報装置も設置された。

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 さらに2002(H14)年には5300F・5302Fの2編成に、5000系等と同様の大規模工事(更新工事)が施された。外観上では、下方に拡大されたドア部の窓が目立つ。車内では化粧板・床敷物の色彩が改められ、座席のオリーブグリーンも濃くなって、袖仕切りが変更されている。このインテリアは、後の9000系に受け継がれる事になる。日よけはヨロイ戸からフリーストップ方式のカーテンに交換されている。冷房装置の改良も行なわれた。

 現在も105両全車が健在、8連×7本・7連×7本が組成され、8連は堺筋線直通運用を中心にして、7連共々、特急を除く京都・千里線各種列車で運用されている。なお、8連は2両を切り離し、6連で嵐山線直通運用にも入れるが、最近はほとんど例がないようだ。1次車は車齢45年を越え、経年化はすすんでいるが、当分は活躍が続くと思われる。

【編成】
←梅田・天神橋筋六丁目方     河原町・北千住方→
 *Mc 5300* - M'c 5400 + *Mc 5300* - M' 5800 - T 5850 - T5850 - *M 5900* - Mc 5400
 *Mc 5300* - M' 5800 - T 5850 - T5850 - T5850 - *M 5900* - Mc 5400
 *Mc 5300* - T5850 - M'c 5400 + *Mc 5300* - T 5850 - T5850 - Mc 5400
 *Mc 5300* - T5850 - T5850 - M'c 5400 + *Mc 5300* - T5850 - Mc 5400

* パンタグラフ

 地元の電車ではないから軽々しい評価は下せないが、電気指令式ブレーキ・中空軸カルダン採用と、後の阪急電車(特に京都線)の基礎となる一方、2000系・2300系に始まる、標識板の使用を前提とした高性能車両の車体デザイン、及び2ハンドルの運転台は、阪急では最後となりました。地味な印象もある5300系だが、結果的に、2200系に始まる次世代阪急車両への橋渡しとなる系列と位置づける事ができそうです。
 
 今回の記事は

「私鉄の車両5 阪急電鉄」(保育社 ※現在はネコ・パブリッシングによって復刻)
「鉄道ピクトリアル1998年12月臨時増刊号 【特集】阪急電鉄」「同2010年8月臨時増刊号 【特集】阪急電鉄」(鉄道図書刊行会)
「HANKYU MAROON WORLD 阪急電車のすべて2010」(阪急コミュニケーションズ)
「鉄道ダイヤ情報 2014年2月号」(交通新聞社)
「阪急電車」(山口益生/JTBキャンブックス)
「私鉄車両年鑑2017」(イカロス出版) 等

を参考にさせて頂きました。
 
 このうち、「阪急電車」に関しては、元阪急電鉄取締役・山口益生氏の筆によるもので、阪急の経営陣の一員にしては(一員だからか)、自社の鉄道車両、ひいては鉄道事業に関して、案外辛辣な評価を下している部分もあって、興味深く読めました(一部「鉄道ピクトリアル臨時増刊」への寄稿と被る部分も)。
 次回のこのシリーズは、阪神8000系を予定しています。

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 阪急・阪神・能勢・北大阪急行の関西4社は、JR西日本のICカードICOCA及びICOCA定期券の発売の開始と、同時に昨年発売を開始したばかりの磁気カード「レールウェイカード」の発売の終了発表しました。時期はどちらも2019年春(ダイヤ改正・おおさか東線新大阪延伸時か)、レールウェイカードの運用終了は同年秋としています。さしもの阪急も、ついにプリペイド式ICカード化への流れには抗いきれなくなった、そんな印象がしました。これで本当に、鉄道業界の磁気カード時代は、終わりの時を迎えたと思います。

《今日のニュースから》
28日 新幹線台車亀裂 有識者会議が最終報告書提出 
29日 「冬のソナタ」ヒロイン チェ・ジウ 結婚発表